Collection: マーク・ロスコ

マーク・ロスコ(1903-1970)は、20世紀アメリカを代表する抽象表現主義の画家です。本名はマーカス・ロスコヴィッチ。ラトビア(当時ロシア帝国)のドヴィンスク(現ダウガフピルス)で生まれ、1913年に家族とともにアメリカに移住しました。

オレゴン州ポートランドで育ち、1921年にイェール大学に入学するものの2年で中退。その後ニューヨークに移住し、独学で絵画を学び始めました。1920年代から1930年代にかけては、具象的な作品を制作していましたが、次第に抽象化への道を歩み始めます。

1940年代後半から、キャンバスに複数の色の帯を描くスタイルである「マルチ・フォーム」に移行し、1949年頃から色を矩形に並べたロスコの代表的なスタイルに到達します。このスタイルでは大きなキャンバスに水平に配置された色彩の矩形が特徴で、色彩の微妙な変化と境界のぼやけた表現により、観る者に深い精神的体験をもたらそうとしました。

ロスコは絵画を単なる装飾ではなく、人間の根源的な感情や精神性を表現する手段と考えていました。「私の絵の前で涙を流す人々は、私が絵を描く時と同じ宗教的体験をしている」と語ったように、芸術を通じた深い感動の共有を目指していました。

代表作には「シーグラム壁画」シリーズや晩年の「ロスコ・チャペルの壁画」があります。1970年、慢性的なうつ病と健康状態の悪化などから、66歳で自ら命を絶ちましたが、その作品は今なお多くの人々に愛され続けています。